その他有価証券評価差額金は、「その他有価証券」に分類される株式や債券を保有している際、期末の時価評価によって取得原価と時価の間に差額が発生したときに計上される金額です。
以下、順に説明します。
有価証券は会計上4つに分類される
企業が有価証券を保有している場合、それらは①売買目的有価証券、②満期保有目的債券、③子会社株式・関連会社株式、④その他有価証券の4つに分類され、会計上適切に記録されます。
①売買目的有価証券は、短期間の取引を通じて利益を得る目的で保有される証券で、いつでも取引可能です。つまり、期末に取引することもできるため、期末時には時価で評価します。
②満期保有目的債券は、満期まで保有することで利息収入を得る目的で保有される有価証券です。これらは期末に売却する予定がないため、時価評価せず、取得原価または償却後原価で評価します。
③子会社株式および関連会社株式は、他社を支配するために保有される有価証券です。そのため、これらの有価証券を売却する予定はなく、期末には取得原価で評価します。
④その他有価証券とは、①~③のいずれにも当てはまらない有価証券であり、期末においては時価評価します。
売買目的有価証券とその他有価証券の会計処理及び財務諸表での表示の違い
①の売買目的有価証券と④のその他有価証券は、いずれも期末に時価評価します。
売買目的有価証券は、期末時価で評価した際の評価損益が収益または費用となるため、その評価損益は損益計算書(P/L)に「有価証券評価損益」として計上します。
一方で、その他の有価証券については、期末時価評価による評価損益が収益や費用には該当しないため、これらの評価損益は損益計算書(P/L)には計上せず、貸借対照表(B/S)の純資産の部分に「その他有価証券評価差額金」として計上します。
その他有価証券評価差額金を貸借対照表(B/S)の純資産の部に計上する理由
図を使って説明します。
売買目的の有価証券に関して、期末の時価評価を行ったところ、有価証券評価益が10計上されたと仮定します。この10の収益は損益計算書で収益として計上され、利益が10増加することになります。
その後、損益計算書の利益は貸借対照表の繰越利益剰余金へと振り替えられます。
一方で、有価証券の金額が10増加した分は貸借対照表に反映され、結果として貸借対照表の資産と純資産がそれぞれ10増加し、貸借の金額が一致することになります。
他方、その他有価証券について、期末時価評価を行い、その他有価証券評価差額金が10計上されたとします。この10の金額は収益計上できないので、損益計算書に計上できません。
一方で、その他有価証券が10増加した分は貸借対照表に反映されます。しかし、貸借対照表の借方においてその他有価証券が10増加した分、貸借対照表の貸借が一致しなくなります。この不一致を解消するために、貸借対照表の純資産にその他有価証券評価差額金10を計上します。こうすることで貸借対照表の貸借が一致するのです。
このようにその他有価証券評価差額金は、損益計算書に計上できません。そして、貸借対照表における貸借の不一致を解消するために、純資産の部に計上されるのです。