相続税⑯「小規模宅地の特例」

ここでは相続税を大幅に安くすることができる制度を紹介します。

それは「小規模宅地の特例」です。

この「小規模宅地の特例」について詳しく見ていきます。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは

「自宅の土地を配偶者か同居親族が相続した場合、330㎡(100坪)まで当該土地の相続税評価額が80%引きになる制度」

のことです。

小規模宅地の特例については、以下の点を説明します。

・適用要件
・小規模宅地の特例が認められる理由
・強力な節税効果
・小規模宅地の特例の計算例 
・被相続人の死後、相続税の確定申告までに遺産分割協議がまとまらなかった場合

適用要件

被相続人が所有する宅地上にある自宅に、被相続人が住んでいた場合(自宅は被相続人が所有者でなくてもOK)で、被相続人の配偶者または同居の親族が当該宅地を相続するときは、330㎡(100坪)まで当該土地の相続税評価額が80%引きになります。

なお、当該宅地を相続するのが配偶者であれば、無条件でこの特例の適用を受けることができます。同居親族の場合は①同居親族が相続税の申告期限(被相続人が亡くなった日から10か月間)まで当該土地を所有し続けること ②同居親族が相続税の申告期限までその自宅に住み続けることが要件となります。別居親族については省略します。

なお、同居親族が被相続人と同居を始める時期については特に規定されていません。したがって、亡くなる直前に同居しても、同居親族が①②の要件を満たせば、小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

小規模宅地の特例が認められる理由

相続財産の約4割は不動産です。そのため、「自宅は相続したけれど、お金がなくて相続税が払えない」という人が多くいます。最悪の場合、自宅を売却して相続税を納めなければならないこともあります。

そこで、このような人々を救うために「小規模宅地の特例」が認められています。この特例により、自宅の土地の相続税評価額が8割引きされ、相続税を払うお金がない人々を助けています。ただし、この特例は土地に関するものであり、建物には適用されません。

また、この制度は、これからもずっと自宅に住み続ける人を保護するためのものです。自宅はあるけれど納税資金がない人を保護するための制度です。そのため、すぐに自宅を売ってしまう人は保護の対象外となります。

この制度では、①同居親族が相続税の申告期限(被相続人が亡くなった日から10か月間)まで土地を所有し続けること ②同居親族が相続税の申告期限までその自宅に住み続けること、という要件を定めており、これらの要件を満たす人を「自宅にずっと住み続ける者」とみなして保護します。逆に、要件を満たさない人は「自宅にずっと住み続けない者」とみなされ、保護の対象外となります。

強力な節税効果

この制度は、土地の相続税評価額が高額になってしまう都会においては、とても強力な節税効果があります。

小規模宅地の特例の計算例 

(例)

自宅とその土地を相続することになりました。土地の相続税評価額は5000万円、土地の面積は500㎡。

(解答)

自宅の土地500㎡のうち、330㎡まではその相続税評価額は8割減となります。そして、残りの170㎡はそのままの相続税評価額で評価することになります。

(5000万円×330㎡/500㎡)×20%+5000万円×170㎡/500㎡=2360万円

つまり、小規模宅地の特例の適用により、土地の評価額を5000万円から2360万円に減額させて相続することができます。

被相続人の死後、相続税の確定申告までに遺産分割協議がまとまらなかった場合

もし遺産が未分割のまま相続税の申告期限(10か月)を過ぎてしまった場合、相続財産の分割が決まらないと各相続人の相続税の納付額を計算できないため、相続税の申告ができません。この場合、法定相続分で遺産を分けたと仮定して相続税の確定申告を行い、納税します。

ただし、この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を利用することができません。その結果、多額の相続税を納付しなければならない場合があります。

しかし、救済措置として、税務署に届出をすれば、申告期限後に正式に財産を分割し、申告をやり直すことができます。この際、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を利用することができます。基本的に3年間延長可能で、被相続人が亡くなってから3年10か月以内に行えばよいのです。

つまり、一旦は高い相続税を支払いますが、後で申告をやり直すことで相続税を還付してもらえます。

タイトルとURLをコピーしました