消費税に関する問題点の一つに「逆進性」があります。逆進性とは、所得の少ない人が税の負担をより大きく感じ、所得の多い人が比較的少ない負担で済む状況を指します。所得税は所得が増えるほど税率が高くなる累進性がありますが、消費税はその逆で、逆進的な性質を持っているとされています。
消費税の逆進性
消費税は商品やサービスの購入時に課される税金で、収入が少ない人ほど消費に対する税の負担が重くなります。
例えば、低所得
者は生活必需品への支出が多いため、収入に占める消費の割合が高くなり、消費税の影響を強く感じます。一方で、高所得者は収入に占めるの消費の割合が少ないため、消費税の影響をあまり感じません。
このため、消費税は逆進性があるとされています。
消費税の逆進性の裏にあるもの
消費税には逆進性があり、低取得者の人には重い税金となってしまいます。そして高所得者は消費税の負担感が薄いのも事実です。
しかし、高所得者は相対的に低所得者よりも消費額が多いため、より多くの消費税を高所得者から徴収できるという面もあります。
また、法人税や所得税は利益を圧縮して、課税を逃れることができる余地があります。つまり、節税の幅が広いです。これに対して消費税は消費に対して課税されるものであり、消費者は商品購入に際して必ず消費税を支払います。よって消費税を逃れるすべがないため、全ての人から平等に課税できるという利点があります。
逆進性の緩和策
消費税の逆進性の緩和策として「軽減税率の適用」、「定額給付金の支給」、「給付付き税額控除」などが挙げられる
✔「軽減税率の適用」
これは消費税の標準税率(10%)よりも低い税率(8%)を適用する制度です。目的は生活必需品などに対する税負担を軽減し、消費者の負担を和らげることです。
この軽減税率には、低所得者と高所得者の不公平をより広げるという批判があります。つまり、軽減税率による恩恵を多く受けるのは消費額が大きい高所得者であるため、不公平が拡大するというのです。
確かに言っていることは間違ってませんが、個人の意見としては、目的の1つは低所得者の消費税の負担を減らすことであり、軽減税率の適用により、その目的を達成しているのではないでしょうか。低所得者の一人である私にとっては食料品に対する消費税額ゼロというのもありだと思います。
✔「定額給付金の支給」
数年前に実施された全国民への10万円支給は、低所得者にとってはありがたい給付だったと思われます。
国民全員に一律に10万円を給付するということは、低所得者の方が、収入の割合がアップします(100万円の年収の人が10万円貰うのと、1000万円の年収の人が10万円貰うのでは、収入の割合アップが10倍違う)。よってこれにより消費税の逆進性は解消されています。
多くの人が消費ではなく貯蓄に回したという批判もありましたが、余裕のある人々は支出を増やし、低所得者にとってはまるでお年玉のように感じられたこともあり、この給付には一定の効果があったと言えると思います。
✔ 「給付付き税額控除」
負の所得税のアイデアを元にした個人所得税の税額控除制度であり、税額控除で控除しきれなかった残りの枠の一定割合を現金で支給するというものです。
所得税の計算方法は(収入ー支出ー所得控除)×所得税率で求めます。(税額控除を除く)
現行の所得税法は例えば(収入100万円ー支出50万円ー所得控除70万円)の場合、ー20万円になるので所得税はゼロということになります。
「給付付き税額控除」は簡単言えば、上記の―20万円に所得税率(ex10%)を掛け合わせて2万円を給付するという考え方です。
つまり、現行においてはたとえば(収入0万円ー支出50万円ー所得控除70万円)=ー120万円の人と、
(収入100万円ー支出50万円ー所得控除70万円)=ー20万円の人とでは同じく所得税0円と計算されます。
それを―120万円の人には120万円×所得税率(ex10%)=12万円の給付を、-20万円の人には2万円を給付するというものです。
これは特に年間の消費額>年間の所得の人で、収入だけではやっていけず、貯金を切り崩して生活している人に取っては救われる制度です。
そして、消費税の逆進性の影響を一番強く受ける層への給付ということで、逆進性の緩和に繋がります。
まとめ
消費税には一長一短があり、消費税の短所の一つが消費税の逆進性です。このような短所は消費税の枠だけで解決しようとせず、もっと大きな視点で解決していくべきだと考えます。定額給付金の支給や、給付付き税額控除などはまさしくこれに当たり、単に消費税の問題を解決する為のものではなく、様々な課題を解決するために行われるものです。
制度を作るとそれにより救われる人と、逆に被害を被る人が出てきます。被害が出てくる人については逐次その解決策を考えて手を打っていくしかないのではないでしょうか。