消費税④「消費税の逆進性とその緩和策」

消費税

消費税に関する問題点の一つに「逆進性」があります。

消費税の逆進性は、所得の少ない人が消費税の負担をより大きく感じ、所得の多い人ほど少ない負担と感じる状況を生みます。

このような消費税の逆進性とその緩和策について説明します。

消費税の逆進性

消費税は商品やサービスの購入時に一律10%課される税金です。

この消費税は低所得者ほど負担が重く、高所得者ほど負担が軽くなる傾向があります。

たとえば年収250万円でそのうち200万円(税抜)を消費に回すAさんと、年収2000万円でそのうち500万円(税抜)を消費に回すBさんを比較します。

Aさんは消費に200万円を充ててかつかつの生活をしています。他方Bさんは消費に500万円も充てることができて生活に余裕があります。

そしてAさんの消費税の負担額は「200万円×10%=20万円」となります。他方Bさんの消費税の負担額は「500万円×10%=50万円」となります。

消費税の負担額だけを見ると、AさんよりもBさんの方が負担額が多いです。

しかし、Aさんは年収250万円に対して消費税の負担額は20万円であり、年収に対する消費税の負担割合は「20万円/250万円=8%」です。

他方、Bさんは年収2000万円に対して消費税の負担額は50万円であり、年収に対する消費税の負担割合は「50万円/2000万円=2,5%」です。

このことから消費税は、所得の少ない人にはその負担が重くのしかかり、所得が多い人には比較的その負担が軽くなるという「逆進性」をうむのです。

消費税のメリット

消費税には逆進性というデメリットがあります。しかし、以下のようなメリットもあります。

消費税のメリット

・高所得者は相対的に低所得者よりも消費額が多いため、より多くの消費税を高所得者から徴収できます。

・法人税や所得税は利益を圧縮して、課税を逃れることができる余地があります。つまり、節税の幅が広いです。これに対して消費税は消費に対して課税されるものであり、消費者は商品購入に際して必ず消費税を支払います。よって消費税を逃れるすべがないため、全ての人から平等に課税できるという利点があります。

逆進性の緩和策

消費税の逆進性の緩和策として「軽減税率の適用」、「定額給付金の支給」、「給付付き税額控除」などが挙げられます。

「軽減税率の適用」

これは消費税の標準税率(10%)よりも低い税率(8%)を適用する制度です。目的は生活必需品などに対する税負担を軽減し、消費者の負担を和らげることです。

この軽減税率には、低所得者と高所得者の不公平をより広げるという批判があります。つまり、軽減税率による恩恵を多く受けるのは消費額が大きい高所得者であるため、不公平が拡大するというのです。

しかし、一般的にエンゲル係数(支出のうち食料費が占める割合)が高い低所得者にとって、食料品などへの軽減税率の適用は消費税の逆進性を緩和する効果が大いにありそうです。個人的意見ですが、低所得者の一人である私にとっては食料品に対する消費税額ゼロというのは、大いに助かります。

「定額給付金の支給」

数年前に実施された全国民への10万円支給は、低所得者にとってはありがたい給付だったと思われます。

国民全員に一律に10万円を給付するということは、低所得者の方が、収入の割合がアップします(100万円の年収の人が10万円貰うのと、1000万円の年収の人が10万円貰うのでは、収入の割合アップが10倍違う)。よってこれにより消費税の逆進性は解消されています。

多くの人が消費ではなく貯蓄に回したという批判もありましたが、余裕のある人々は支出を増やし、低所得者にとってはまるでお年玉のように感じられたこともあり、個人的にはありがたい支給でした。

 「給付付き税額控除」

負の所得税のアイデアを元にした個人所得税の税額控除制度であり、税額控除で控除しきれなかった残りの枠の一定割合を現金で支給するというものです。

所得税の計算方法は(収入ー支出ー所得控除)×所得税率で求めます。(税額控除を除く)

現行の所得税法は例えば(収入100万円ー支出50万円ー所得控除70万円)の場合、ー20万円になるので所得税はゼロということになります。

「給付付き税額控除」は簡単言えば、上記の―20万円に所得税率(ex10%)を掛け合わせて2万円を給付するという考え方です。

つまり、現行においてはたとえば(収入0万円ー支出50万円ー所得控除70万円)=ー120万円の人と、
(収入100万円ー支出50万円ー所得控除70万円)=ー20万円の人とでは同じく所得税0円と計算されます。

それを―120万円の人には120万円×所得税率(ex10%)=12万円の給付を、-20万円の人には2万円を給付するというものです。

これは特に年間の消費額>年間の所得の人で、収入だけではやっていけず、貯金を切り崩して生活している人に取っては救われる制度です。

そして、消費税の逆進性の影響を一番強く受ける層への給付ということで、逆進性の緩和に繋がります。

最後に

制度を作ると、その恩恵を受ける人と不利益を受ける人が出るため、不利益を受ける人への支援が必要です。よって消費税という制度により不利益を受ける人への対策、支援が不可欠です。

そして消費税の問題は、消費税の枠内だけで解決するのではなく、広い視点で対応すべきです。例えば、定額給付金や給付付き税額控除は、消費税対策にとどまらず、さまざまな課題の解決を目的としています。

消費税は色々と問題をはらんだ制度であるため、その対策がとても重要です。

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