貸倒引当金繰入額はなぜ「費用」なのか

簿記の勉強を続けていくと、「貸倒引当金」が登場します。

初めての学習のときは、特に疑問を持つことなく学習が進むと思います。

しかし学習が進み、何度も「貸倒引当金」が登場するうちに、何か上手く言葉でも説明できないようなもやもやした疑問・違和感が出てくるのではないかと思います(私がそうでした)。

自分がもやもやした疑問・違和感を言葉で表すと、以下のような疑問でした。

 なぜ、貸倒損失や貸倒引当金繰入額は、費用に計上するのか
・② なぜ、貸倒引当金戻入は、収益に計上するのか
・③ なぜ、貸倒引当金繰入の相手勘定は貸倒引当金なのか
・④ 貸倒引当金とはいったいなんなのか

これらの疑問について、順次説明していきます。

 なぜ、貸倒損失や貸倒引当金繰入額は、費用に計上するのか

結論を先に言うと、「貸倒損失や貸倒引当金繰入額は売上の取消だから」です。

具体例を使って説明します。

具体例

期において、商品100万円を掛けで売り上げました。当該売掛金のうち、60万円は当期中に回収不能となり、残り40万円についても将来的に回収が見込めないので、期末に貸倒引当金40万円計上しました。

具体例を仕訳で表すと、

掛売上時          (売掛金)100万円/(売上)100万円

売掛金の回収不能時     (貸倒損失)60万円/(売掛金)60万円

引当金設定時        (貸倒引当金繰入)40万円/(貸倒引当金)40万円

となります。

「売掛金の回収不能時」は (貸倒損失)60万円/(売掛金)60万円 という仕訳を切りますが、要は「売上100万円を計上したうち、60万円の売上(収益)は実現しなかった」ということになるため、借方に貸倒損失60万円という費用を計上することで、間接的に売上を取り消しているということです。

「引当金設定時」の(貸倒引当金繰入)40万円/(貸倒引当金)40万円 の仕訳も同様です。「売上100万円を計上したが、残りの40万円の売上(収益)もほぼ実現しない」ということであり、借方に貸倒引当金繰入40万円という費用を計上することで、間接的に売上を取り消しているということです。

② なぜ、貸倒引当金戻入は、収益に計上するのか

結論を先に言うと、貸倒引当金戻入とは「いったん取り消した売上(収益)を計上しなおす」という意味です。

先ほどの例で、第1期末に(貸倒引当金繰入)40万円/(貸倒引当金)40万円 という仕訳を切りましたが、第2期において予想に反して当該売掛金が回収できたとします。その時の仕訳は以下のとおりです。

売掛金回収時     貸倒引当金)40万円/(貸倒引当金戻入)40万円  
           (現金)40万円/(売掛金)40万円
           

つまり、第1期末において(貸倒引当金繰入)40万円 を計上することで売上(収益)を取り消していましたが、その売掛金が回収できたということは、売上も実現したということになり、それを表現するために(貸倒引当金戻入)40万円 という収益を計上するということです。

③ なぜ、貸倒引当金繰入の相手勘定は貸倒引当金なのか

これも先に結論を言うと、「債権が回収不能であると確定していないから」です。

先ほどの例で、第1期末の引当金設定時に       

    (貸倒引当金繰入)40万円/(貸倒引当金)40万円

という仕訳を切りました。

この時点(第1期末)においては売掛金40万円が回収不能であることがほぼ100%であったとしても、回収不能であることが確定している訳ではないので、売掛金40万円を消すということはできません。つまり、決算時において、

     (貸倒引当金繰入)40万円/(売掛金)40万円

という仕訳は切れないということです。であるなら貸方勘定は「売掛金」にはできず、便宜的に「引当金」勘定を用いて仕訳を切ることになります。

④ 貸倒引当金とはいったいなんなのか

これまた先に結論を言ってしまうと、「貸倒引当金とは資産のマイナス項目」ということになります。

引当金設定時の仕訳は

     (貸倒引当金繰入)40万円/(貸倒引当金)40万円

となり、この時「売掛金40万円」は資産計上されたままです。しかし、この資産計上された「売掛金40万円」の価値はほぼゼロであり、売掛金の価値がほぼゼロであることを表現するために、資産の部において、

資産の部

売掛金     40万円
貸倒引当金  △40万円
         0円

と表現されるのです。財務諸表論においてこのような表示が多く見られるのではないでしょうか。

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