相続人は被相続人の財産を相続する権利を有しています。
しかし、一定の場合には相続人が相続権を失ったり、特定の相続人の相続権を剥奪することができます。
一定の場合に、相続人が相続権を失うことを「相続欠格」といい、特定の相続人の相続権を剥奪することを「相続廃除」と言います。
この記事では「相続欠格」と「相続廃除」について解説します。
相続欠格
相続欠格とは相続人が特定の重大な非行を行った場合に、その相続権を失う制度です。
✔相続欠格の事由(民法891条1~5号)。
・故意に被相続人や他の相続人を死亡させた、または死亡させようとした場合
・被相続人が殺害されたことを知りながら告発しなかった場合
・詐欺や強迫によって被相続人の遺言作成を妨げた場合
・詐欺や強迫によって被相続人に遺言を作成させた場合
・被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合
✔相続欠格の効果
相続欠格事由が発生すると、その相続人は裁判手続きなしで相続資格を失います。相続発生前に欠格者となった場合、相続発生後に相続できません。相続発生後に欠格者となった場合も、相続時に遡って資格を失い、財産や遺留分を相続できません。
ただし、相続欠格は本人にのみ効力があり、代襲相続は発生します。
相続廃除
相続廃除とは、特定の相続人の相続権を剥奪する制度です。これは、被相続人(亡くなった方)が相続人から虐待や重大な侮辱を受けた場合、または相続人が著しい非行を行った場合に適用されます(民法892条)。
相続廃除の手続は以下のとおりです。
・家庭裁判所への申し立て
・遺言書による申し立て
✔家庭裁判所への申し立て
生前に家庭裁判所に申立てを行い、相続人廃除を認めてもらう方法です。この方法では、廃除が認められると、廃除された人の戸籍謄本にその旨が記載されます。
相続人廃除は、推定相続人の虐待や暴力が原因で認められますが、戸籍に記載されることで、さらに暴力が悪化する可能性があります。これにより、廃除したくてもできない人が出てくるかもしれません。
✔遺言書による申し立て
生前に廃除すると戸籍に記載されるため、遺言書で相続人廃除をすることもできます。遺言書なら、死亡後に相続権を失わせ、暴力を避けることができます。
遺言書による廃除は、被相続人がすでにこの世にいないので、遺言執行者が家庭裁判所に請求します。
最後に
相続欠格や相続廃除は、相続における重要な制度です。これらを理解することで、相続に関するトラブルを未然に防ぎ、公正な相続を実現することができます。