今回の話も、前々回である相続税⑥「法定相続人を増やすことによる相続税の減額の規制」と前回の話である相続税⑦「養子を用いた相続税の節税」の話の続きでもあります。
つまり、今回の孫養子の話も「養子の数を増やして、相続税を減額しよう」という話です。
孫養子とは、孫を自分の子供にすることを言います。
孫養子は相続税を節税するためにとても有効な方法です。
この孫養子による相続上のメリットデメリットを解説したいと思います。
孫養子
孫養子とは、祖父母が孫を養子にすることを言います。これにより、民法上孫は祖父母の第1順位法定相続人になります。

孫養子のメリット
孫養子のメリットは以下のとおりです。
・一代飛ばして相続できる
・法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額が増え、相続財産を減少させることができる
・法定相続人が増えることで、死亡保険金、死亡退職金の非課税枠を増やすことができる
・結果、相続税の適用税率を下げることができるため、相続税を安く抑えることができる
つまり、いずれも相続税の節税に役立ちます
✔一代飛ばして相続できる
通常、「親→子→孫」という順序で相続が行われ、各段階で相続税が課されます。しかし、孫を養子にすることで「親→孫」と一代飛ばしの相続が可能となり、相続税の節税に役立ちます。
✔法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額が増え、相続財産を減少させることができる
相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。
よって「法定相続人の数」を増やせば、基礎控除額が上がり、相続税を減額することができます。
しかし、前回の「養子」の話と同様に、孫養子を際限なく増やして(つまり第1順位法定相続人を際限なく増やして)相続税を減額することについては、法によって規制されています。
孫養子を相続税の計算上法定相続人の数にカウントできるのは、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
よってたとえば実子がいる場合に孫を3人養子としたときは、相続税の計算上法定相続人の数を1人増やすことができるので、その範囲内で相続税を減額することができます。
また、実子がいない場合に孫を3人養子にしたときは相続税の計算上2人を法定相続人の数に含めることができるため、その範囲内で相続税を減額することができます。
✔法定相続人が増えることで、死亡保険金、死亡退職金の非課税枠を増やすことができる
死亡保険金、死亡退職金の非課税枠の計算は、「500万円×法定相続人の数」で計算します。
よって「法定相続人の数」を増やせば、非課税枠が大きくなり、相続税を減額することができます。
そして相続税の基礎控除の場合と同じく、孫養子を法定相続人の数にカウントできるのは、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
よってたとえば実子がいる場合に、孫を3人養子にしたときは、相続税の計算上法定相続人の数を1人増やすことができるので、その範囲で相続税を減額することができます。
また、たとえば実子がいない場合に孫を3人養子にしたときは、相続税の計算上法定相続人の数を2人増やすことができるので、その範囲で相続税を減額することができます。
✔結果、相続税の適用税率を下げることができるため、相続税を安く抑えることができる
法定相続人の数を増やすことにより、相続税の基礎控除額、死亡保険金、および死亡退職金の非課税枠が拡大し、結果として課税される財産の額が減少します。これにより、適用される税率も低くなり、相続税の負担が軽減されます。
また法定相続人の数を増やすことにより、相続財産が分散するため、超過累進税率の下で低い相続税率が適用されることで、相続税の負担の軽減が期待できます。
要は孫養子は相続税の節税対策に利用できるということです。
孫養子のデメリット
孫養子のデメリットは以下のとおりです。
・孫養子が相続する場合、相続税が1,2倍になってしまう人がいる
・孫養子が増えるということは、その分だけ他の相続人の取り分が減少することを意味するため、相続トラブルの原因となる
✔孫養子が相続する場合、相続税が1,2倍になってしまう人がいる
孫養子が相続する場合、相続税が2割増しになる人とならない人がいます。
・相続税が2割増しにならない人
被相続人の一親等の人(配偶者、父母、子供)+代襲相続する孫
・相続税が2割増しになる人
被相続人の一親等以外の人(兄弟姉妹、甥、姪、代襲相続以外の孫、孫養子、友人、愛人など)
※2割増しするか否かの判断は「親等」で決めます。

✔孫養子が増えるということは、その分だけ他の相続人の取り分が減少することを意味するため、相続トラブルの原因となる
孫養子は相続税の節税に有効です。しかし、節税できるからといって安易に孫養子を迎えると、それによって相続上不利になる人がいるため、トラブルが起きやすいです。よって家族会議で十分に話し合いを行うべきです。

ちなみに、孫養子を迎えると、兄、姉の法律上の取分は1/8に減りますが、あくまでもこれは「法律上の取分」です。よってこの取分は遺産分割協議(家族会議)で変更することは可能であり、「兄1/6、姉1/6、弟1/12、孫養子1/12」で相続すれば兄弟間の不公平は解消されます。