養子縁組をした場合、相続税を節税することができます。
ここでは、養子で相続税を節税できる理由や、民法上における養子の規定との関係について説明していきます。
養子縁組をするとその養子は法定相続人になる
民法887条1項では「被相続人の子は、相続人になる」と定められています。
すなわち、養子縁組をすると法律上の親子関係が生じるため、養親が亡くなった場合、その子に当たる養子も法定相続人になります。
したがって、上のように父が右下の2人を養子として迎えた場合、この2人は法定相続人になり、被相続人の財産を相続する権利があります。つまり、法定相続人は妻1人+子5人=6人となります。
養子を使った相続税の節税
民法上、養子の数を制限する法律はありません。よって養子は無制限に認められます。
であるならば、養子を無制限に受け入れて、相続税の節税ができそうです。例えば、養子を沢山受け入れて、法定相続人を増やして相続税の基礎控除額を引き上げることができそうな気がします。
EX 被相続人の妻と子2人がいる場合の相続税の基礎控除額
3000万円+(600万円×法定相続人の数3人)=4800万円
「もっと相続税の基礎控除額を増やして、課税される相続財産を減らして、相続税を減額したいよ」と考えて、養子を3人迎え入れた場合、相続税の基礎控除額は
3000万円+(600万円×法定相続人の数6人)=6600万円
と計算されるが、これは認められるのか?
結論から言うと、これは認められません。確かに民法上は養子の数に制限を設けていません。しかし、この養子を無制限に法定相続人としてカウントすることを認めてしまうと、相続税を無限に少なくすることが出来てしまいます。
そこで相続税法上、制限が設けられています。目的は相続税の租税回避を防ぐためです。
・実子がいる場合・・・・相続税の計算上、養子を法定相続人の数としてカウントできるのは1人まで
・実子がいない場合・・・相続税の計算上、養子を法定相続人の数としてカウントできるのは2人まで
・実子がいる場合
上のように被相続人の実子がいる場合は養子を法定相続人の数としてカウントできるのは1人までです。しかし、あくまで養子2人とも法定相続人です。
・実子がいない場合
上のように実子がいない場合は養子を法定相続人の数としてカウントできるのは2人までです。またこの場合も5人すべてが法定相続人であることは変わりません。
ポイント
・民法上、養子の数は無制限に認められる
・相続税法上、養子を法定相続人の数としてカウントできる数は制限されている
このように養子を使った節税は制限が設けられているのは事実ですが、養子を使えば、相続税を節税できるのは事実です。養子を使えば、以下の点で節税できます。
・法定相続人を増やすことで相続税の基礎控除額を増やすことができる
・法定相続人を増やすことで死亡保険金、死亡退職金の非課税枠を増やすことができる
・法定相続人を増やして相続税が課税される財産を減らすことで適用税率を下げることができる
「相続人」と「法定相続人」と「法定相続人の数」について
「相続人」と「法定相続人」の違いについては相続税⑥において説明しました。ここでは「法定相続人の数」も入れて説明し直したいと思います。
例を示して説明します。
上の図において、弟が相続放棄します。
弟が相続放棄することで「相続人」すなわち、実際に財産を相続するのは、弟を除く、兄、姉、養子2人の計4人ということになります。
そして、民法上、養子は法定相続人として認められています。
また、たとえ弟が相続放棄をしても、法定相続人のままです。つまり、「法定相続人」は全員ということになります。
しかし、養子を無制限に「法定相続人の数」としてカウントを認めてしまうと租税回避を認めてしまうことになります。そこで、相続税法においては制限を設けていて「実子がいる場合において養子を法定相続人としてカウントできる人数は1人まで」と定めています。このことから「法定相続人の数」は兄、姉、弟、養子1人の計4人ということになります。