相続税は「相続財産×相続税率」によって計算されます。
ここでいう「相続財産」とは、「プラスの財産-マイナスの財産」の差額です。
すなわち、相続税は「(プラスの財産-マイナスの財産)×相続税率」によって算出されます。
また、「プラスの財産」には「民法上の財産」と「相続税法上の財産」が含まれます。
この記事では、相続税法上の財産である「死亡保険金」と「死亡退職金」について説明します。
相続税法上の財産
民法上の相続財産とされるのは、被相続人(亡くなった人)に帰属するもので、被相続人から相続人に相続される財産です。
しかし、被相続人の死亡後、受け取ることができる死亡保険金や死亡退職金は、被相続人から相続人に直接相続されるものではなく、保険会社や被相続人の勤め先の会社から相続人に支払われるものなので、民法上これらは相続財産には含まれません。
しかし、これら死亡保険金や死亡退職金は相続税法上の財産として相続財産に含めて相続税を計算することになります。
相続税の計算対象となる財産
民法上の相続財産+相続税法上の相続財産(死亡保険金+死亡退職金)
死亡保険金
以下の順で解説します。
・生命保険金とは
・死亡保険金が相続税法上、相続財産になる理由
✔生命保険金とは
生命保険金とは、大勢の加入者があらかじめ公平に保険料を負担しあい、「もしも」のことが現実に起きたときに、保険会社から給付を受けることができるお金です。
契約の種類により様々な保険が存在しますが、たとえば、加入者が亡くなった時に遺族に支払われる死亡保険金があります。
✔死亡保険金が相続税法上、相続財産になる理由
民法上の相続財産は、相続人が被相続人から直接相続する財産です。しかし、死亡保険金は相続人が保険会社から受け取るものであるため、民法上の相続財産には含まれません。
被相続人は亡くなる前に保険会社に保険金の支払を行っています。そして被相続人が亡くなることによって保険会社から相続人に保険金が支払われます。
この死亡保険金のお金の流れを見ると、「被相続人→保険会社→相続人」にお金が流れていることが分かります。そうすると被相続人の財産が相続人に流れている、すなわち死亡保険金の額が相続されていると考えることができるため、相続税法上、死亡保険金は相続財産に含められるのです。
死亡退職金
以下の順で説明します。
・死亡退職金とは
・死亡退職金が相続税法上、相続財産になる理由
✔死亡退職金とは
死亡退職金とは、労働者の死亡による退職を機に発生する退職金のことで、遺族に対して支払われます。
つまり、労働者が死亡しなければ、労働者に支払われていたはずの退職金を労働者の死亡によりその遺族が受け取ることになるお金のことです。
✔死亡退職金が相続税法上、相続財産になる理由
民法上の相続財産は、相続人が被相続人から直接相続する財産です。しかし、死亡退職金は被相続人の勤め先から相続人に支払われるものであるため、民法上の相続財産には含まれません。
労働者は勤め先に労働を提供して、その対価として給料を貰います。そして死亡退職金も労働の対価として勤め先から支払われるものです。つまり、給料と死亡退職金はともに労働の対価として受け取るものであり、その違いは受け取るタイミングが労働者の生前か死後かという違いだけです。
死亡退職金は、もし被相続人が亡くなっていなければ本人に支払われるものであり、その後相続人によって相続されることになります。したがって、死亡退職金は相続財産とみなされ、相続税法において相続財産に含まれます。
死亡保険金と死亡退職金の非課税枠
死亡保険金と死亡退職金は、残された遺族にとっては生活をする上で必要不可欠なお金となることもあるため、そのことが考慮されて一定の非課税枠が設けられています。
すなわち、死亡保険金の額、死亡退職金の額がある一定額以下であるなら、死亡保険金、死亡退職金に相続税は課税されません。
死亡保険金、死亡退職金の非課税枠
・死亡保険金
500万円×法定相続人の数
・死亡退職金
500万円×法定相続人の数
これらの非課税枠は別々に設けられています。
すなわち、例えば法定相続人の数が3人で、死亡保険金1500万円、死亡退職金3000万円の支払が行われていた場合、
死亡保険金は「死亡保険金1500万円-500万円×法定相続人の数3人=ゼロ」となるため相続税がかかりません。
一方死亡退職金は「死亡退職金3000万円-500万円×法定相続人の数3人=1500万円」となり、1500万円に対して相続税が課税されます。
参考
✔マイナス財産とは
相続財産は被相続人のプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて求めます。
ここで言うマイナスの財産は、例えば「被相続人の借入金、被相続人の葬式費用、被相続人の未払の税金」などです。
✔非課税の資産
被相続人が保有する財産であっても、ある一定のモノは非課税となり、相続税が課税されません。
例えば、「墓石、位牌、仏壇仏具」は非課税対象です。これは、故人を弔うための品々に課税することへの国民感情を考慮した結果です。
しかし、純金製でできた位牌などは貴金属とみなされて相続財産として課税されることもあります。