消費税には多くの問題がありますが、一方で必要な税であるという面もあります。
すなわち、消費を冷やし、低所得者に重い負担を強いる一方で、社会保障の財源として必要不可欠とも言えます。消費税を廃止すれば、公共サービスが維持できなくなるかもしれません。また、輸出企業を支える役割もあります。
これらの点を踏まえ、消費税の在り方について考えてみたいと思います。
消費税の問題点
消費税の問題点を列挙してみます。
・滞納額が一番多い税金である
・小規模な事業者を苦しめる税金である
・国民から輸出企業にお金が流れる税金である
・消費税は貿易摩擦を生む
・消費税は雇用を不安定化させる
・税の逆進性を生む
・デフレスパイラルを生む
それぞれ、説明していきます。
✔滞納額が一番多い税金である
以下の表は国税庁のホームページに掲載されているものです。このグラフは税金の滞納額を示しており、黄色い部分は消費税の滞納額を表しています。これにより、消費税の滞納が全体の中でいかに多いかが一目でわかります。
これだけ滞納があるということは、事業者が消費税を価格に転嫁できず、消費者から消費税分を徴収できていないという見方もできると思います。
厳しい価格競争の中で、領収書やレシート上は消費税を取っているように見えても、実際は取っていないからこそ、滞納額が多いのだと思います。
赤字でも支払わなければならない厳しい税金なのです。
✔小規模な事業者を苦しめる税金である
小規模な事業者は価格面ではなかなか大手に太刀打ちできません。よって、小規模事業者を守るために、消費税においても優遇措置を設けるべきです。
その優遇措置として、いままで消費税の免税事業者の制度、簡易課税制度がありました。
しかし、インボイスの導入によって免税事業者という優遇措置をなくそうとしています。これは小規模事業者にとって負担が重く、小規模事業者を苦しめるものです。
✔国民から輸出企業にお金が流れる税金である
ある面から消費税のお金の流れを捉えると、国民から徴収した消費税を輸出企業に流しているという風な見方もできてしまいます。
消費税を間接税と捉えるなら、この考え方は誤りですが、消費税を直接税と捉えるなら、こういう見方もできるかもしれません。
✔消費税は貿易摩擦を生む
消費税を直接税と捉えると、「消費税は国から自国企業に対する補助金」と捉えることができます。
したがって、消費税を導入していない国(例えばアメリカ)からすれば、「国が自国の企業に補助金を出すなんて自由貿易に反する」ということになり、貿易摩擦を生むことになります。
✔消費税は雇用を不安定化させる
消費税は企業に「正社員を減らして、派遣社員を多く雇用しよう」という行動を起こさせます。
企業は社員に給料を支払う場合、社員は事業者でないから消費税が課税されずに給料が支払われます。つまり、従業員に支払った給料については自社において仕入税額控除ができないのです。
一方で、派遣社員の場合、企業は派遣社員を提供した派遣会社に対価を支払いますが、派遣会社は課税事業者なのでその受けた対価に消費税を課税します。その結果、企業は派遣会社に支払う派遣社員の給料に関して仕入税額控除をすることができるため、正社員を雇うよりも派遣社員を雇用したいと思うのです。
✔税の逆進性を生む
税の累進性とは、所得が高くなるにつれて高い税率が適用され、その結果所得に対する課税の割合が高くなるような仕組みのことを言います。
そして税の逆進性とは、所得が低い人ほど所得に対する税金の負担率が上がっていき、所得が高い人ほど所得に対する税の負担割合が小さくなっていくことを言います。
所得が低い人の場合、所得に対するモノの購入の比率が高くなります。モノを購入する場合は消費税を支払わなければならないため、低所得者ほど所得に対する消費税の負担率が上がり、税の逆進性を生み出すのです。
✔デフレスパイラルを生む
消費税が上がると、一般家庭の消費が下がります。そうすると企業はモノが売れないから価格を下げます。価格を下げると企業は儲からないから、従業員の給料は下がります。従業員の給料が下がると一般家庭の消費が下がります。
消費税はこのようなデフレスパイラルを生み出すのです。
消費税の必要性
消費税の必要性を列挙します。
・社会保障や公共サービス維持のため
・輸出企業を応援するため
✔社会保障や公共サービス維持のため
我々が当たり前に受けている社会保障や公共サービス。これらはその提供を行うための財源の確保が必要です。
「消費税は社会保障の財源として使われていない」というような報道を耳にすることもありますが、違和感を覚えます。日本の社会保障はとても厚いものであり、それはすなわち、社会保障に十分に財源が充てられていることを意味します。
税金と国債の発行で賄った財源をシャッフルして、その財源から十分に社会保障に充てられている。結果として社会保障が充実しているなら、消費税の使い道についてうんぬんするのは、あまり意味がないように思います。すごく反論されそうですが、、、
また、「税は財源ではない」という主張もよく耳にします。だから消費税を廃止しても問題はないということですが、消費税などの痛みを伴わないで、国債を発行して社会保障や公共サービスを充実させることが本当に可能なのか疑問に感じます。いつか誰かがそのつけを払わなければならないのではないかと思うのです。
✔輸出企業を応援するため
消費税には歴史があります。
昔、フランスで自国の輸出企業に補助金を出していました。しかし、各国から自由貿易に反するからということで非難されました。そこで、消費税の間接税による還付金という仕組みを作って補助金を出すことにしたのです。
消費税の還付金は表向きは補助金ではありません。でもその実態は補助金です。この仕組みを各国が真似て、今では多くの国において消費税(付加価値税)が導入されています。
消費税の還付金が実質補助金であるなら、日本も同じように消費税を取り入れないと、日本の輸出企業に補助金を出せず、国際競争力で負けてしまいます。
そこで日本においても消費税が導入されることになったのです。
経団連には輸出企業も多く含まれており、特に大手製造業は経団連の主要メンバーです。そして経団連は消費税の増税を主張します。色んな理由で消費税増税を主張しますが、本当の主張理由は「今の消費税率のままであると国際競争力に勝てない」ということだと思います。
でも、この主張をしてしまうと、消費税の還付は補助金であるということを認めることになるため、はっきりと主張できないのです。
下のグラフを見ると、日本の消費税率が他の国に比べて低いことが分かります。これはすなわち、日本国の自国の輸出企業に対する補助金の少なさを意味します。
財務省HPより抜粋
ヨーロッパの国々では、日本よりもより早く付加価値税を導入して輸出企業を補助金で支えてきたという歴史があります。 だから、経団連などはヨーロッパと同水準の消費税率にして輸出企業を応援してくれないと国際的に敗北するよって言うことで消費税増税を訴えているのです。
消費税を上げると国内消費が冷え込んで景気が悪くなるけど、消費税を上げないと日本の輸出企業が弱体化して国際競争力を失うというジレンマがあるのです。
消費税がもたらす波紋
その他、消費税がもたらす波紋について列挙してみました。
・マスコミの偏った報道
・アメリカのしたたかさ
・日本の農業の衰退
✔マスコミの偏った報道
マスコミも基本的には消費税増税に賛成です。
なぜならマスコミは大企業から多額のCM料金を貰っており、この利益を維持するためには大企業に不利な宣伝はできないからです。
特に、輸出補助金に関してはタブーであり、テレビなどでは決して報道されません。
✔アメリカへの配慮
アメリカには消費税がありません。よってアメリカは消費税の還付金スキームを使って補助金を自国企業に出せません。
したがって日本が消費税により自国の輸出企業に補助金を与えていることを快く思っていません。
よって国際会議により、この不利を穴埋めしようとしてくるのです。
アメリカの超大手企業は税金をほとんど払っていないと耳にします。これは消費税の還付を行う代わりに、法人税の節税スキームをあえて使わせて、税金をゼロにすることで補助金を与えているのと同じ効果をもたらそうとしているのかと疑ってしまいます。
アメリカは強くてしたたかな国です。消費税の還付金スキームが使えないことを理由に沢山有利な条件を引き出しているのではないかと思います。
それに、消費税がないということは、アメリカ国内ではモノを買うときに消費税がかからないということであり、アメリカの内需は潤い経済が活性化することを意味します。
色々考えをめぐらすと、やはりアメリカはしたたかで損をする立ち回りはしない国なのかと思いました。
✔日本の農業の衰退
2020年1月1日に発行した日米貿易協定により、日本はアメリカ産の農作物などの90%に対して関税の撤廃または優遇を適用しました。これにより、アメリカ産の牛肉や豚肉、特定のナッツや果物、野菜などの関税が引き下げられました。
これは、日本の消費税を引き上げるとアメリカにとって不利になるので、その交換条件としてアメリカの農業が有利になるようになされた協定であると考えられます。
この協定は、日本の消費者にとってはアメリカ産の食品を安く購入できるメリットがありますが、日本の農業は価格競争で勝てないというデメリットがあります。
消費税とその立ち回り
消費税には長い歴史があり、その表面的な側面と隠された側面が存在します。消費税は国際的な力関係がからみ、そしてそれに巻き込まれる形で日本で導入され様々な問題を引き起こしてきました。
このように消費の問題は、国内だけでなく国際的な要素も含まれており、単純なものではありません。
そのため、私たちにできることは、消費税について詳しく学び、損をしないように行動することだと思います。