消費税⑯「消費税は直接税なのか?」

消費税は直接税か間接税か、預り金にあたるのかそうでないのか、益税が実際に存在するのかどうか。

インボイス制度の導入により、これらの話題が注目されています。

この問題は非常に複雑で、多くの人々の感情が絡み合うデリケートなものです。

消費税法に関する知識はまだまだ浅いですが、これまでに得た知識をもとに、このような問題に対する私の意見を述べたいと思います。

私の意見は、単なる感想にすぎないのかもしれません。知識が増えれば、考え方も変わるかもしれません。

消費税は益税か否かが争われた裁判

以前、免税事業者が消費者から受け取った消費税を国に納付しないことは、益税であり不当であると主張する裁判が行われました。その裁判の判決は以下のとおりです。

「…消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」(東京地裁平成2年3月26日判決より)

判決文全体を読んだわけではなく、上記の判決文の切り抜きを読んだだけですが、これには多くの意味が込められていると感じました。

判決文の一部から私が読み取った主な点は以下の通りです。

①「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」という判決文は、需要と供給のバランスで商品価格が決定されることを述べているのかなと思います。
②「事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」という判決文は正しいことを言っていると思います。

以下①と②を説明します。

①「商品価格はあくまで市場における需要と供給のバランスで決まるので、まずは市場において消費税込みの商品の価格が決まって、結果としてその中から消費税を支払うということになる」ということを述べているのかなと思います。

つまり、需要と供給のバランスによって、税込み価格で商品価格が決まるのであって、需要と供給のバランスによって、まずは税抜き価格が決まって、それから消費税額が上乗せされて商品価格が決定するわけではないということです。

②消費税は、事業者がレシートに記載された金額をそのまま国に納付するのではなく、消費税法に基づいた計算方法に従って一定期間の消費税額を計算し、納付するものです。そしてその納税額も計算方法によって異なってきます。したがって事業者はレシートに記載された消費税額を過不足なく納付する義務は負っていないと言えます。

この①、②の考え方によれば、私がこれまで学んできた消費税が間接税であるという理解を見直す必要があるのかもしれません。

消費税は付加価値税だから直接税なのか?

消費税はモノの消費に対して課する税金であり、付加価値税は事業者が生み出した付加価値に税金を課するものです。

「ヨーロッパの付加価値税は日本の消費税と同じ」みたいな説明を聞いたことがありますが、それぞれ税金を課す対象が全く違うので、全く別物の税金ではないのか?というのが私の感想です。

付加価値税は事業者が生み出した付加価値に税金を課するので、税金を負担するのも、納税義務を負うのも事業者であるため「直接税」ということになりそうです。

しかし、世の中では付加価値税も「間接税」という位置付けがなされているようです。

私の意見としては、もしも日本の消費税が「付加価値税」なら直接税に該当するのかなと思います。

消費税の計算方法

もし消費税が付加価値税である場合、計算方法はまず「売上価格から仕入価格を引いた額=事業者によって生み出された付加価値」として求め、その後、この付加価値に税率を適用して納税額を算出します。

しかし、日本の消費税法では、消費税額は基本的に「受け取った消費税額から支払った消費税額を引いた額=納税額」として計算されます。この計算方法からは、消費税は間接税として扱われているように思われます。

インボイス制度の矛盾

インボイス(適格請求書)は売り手が買い手に渡すものです。

そしてインボイスには「お客様から頂いた消費税は、必ず納税されることを国が保証いたします。」というメッセージが込められていることは別の記事で説明しました。

しかし、消費税を付加価値税(直接税)と捉えるなら、そもそも売り手は買い手から消費税を預かっていないので、インボイスに込められたメッセージには誤りがあることになります。

このように、消費税を付加価値税(直接税)と捉えるなら、インボイスの発行は理論的におかしいということになります。

現時点での私の意見

消費税は直接税なのか、間接税なのかについては、今の所直接税であるのかなという意見です。

消費税は付加価値税という直接税であり、事業者の付加価値に課される税金と考えます。

免税事業者が消費税を免除される理由は、例えば所得税が収入103万円以下なら免除されるのと同じように、課税売上高が小さい事業者は消費税が免除されているという考え方がしっくりきます。

立場の弱い個人や企業が税制上で優遇されるのは、一般的な税法の特徴であり、消費税法における免税事業者も同様の理由で消費税の支払いが免除されていると考えます。よって免税事業者が益税を受けているという考えは誤りであると思います。

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